怖い話(ではない)

 電車に揺られていた。ふと顔を上げると、窓に白い手形がいくつもへばりついていた。ぎょっとすると同時に、ぶわりとホラー映像が駆け抜けた。でもすぐに冷静になった。窓を開けようとしたか何かで、内側から付着したものだろうなと思い直した。


 まだ自分の中では春だから、外出してあまりの暑さに面食らった。漢検の試験会場に行ったら小学生と思しき子どもたちが沢山いて、これまた驚いた。私が受けようとしているのは準一級で、小学生にはまだ難しいだろうと思ったから。子どもたちのほとんどは親御さんと思しき大人と共に熱心に勉強していて、何だかその熱量に気圧された。私は今回勉強不足で、二百点満点中百点取れたら御の字くらいの心持ちで臨んでいた。自分が情けないやら子どもたちが素晴らしいやらで、会場の掲示板に貼り出されたスケジュールを見たら、準一級の他に四級と六級も同じ時間で行われることが分かった。子どもたちが四級と六級の教室にぞろぞろ入っていくのを見て、なあんだ、と思った。なあんだ、と思ったことで、ますます自分のことが情けなくなった。